評価:A+ 本作品は兎角、車を乗り回すシーンが多く、次作への「つなぎ」のような感も否めなくはありません。まあそれが車に乗る者の心境を反映しているということならば意味はあるのですが。そして、その代わりとあってか今回はその節々に興味深い問い掛けが結構多くなされています。
それにしても排ガスに劇物を入れたとはなかなか考えましたね。しかも犯人が分からない儘という余韻を残した終わり方も意味深な感じがして、考えさせられるところがあります。
途中、交通事故が起き犠牲者が出てしまいますが、そんな不遇にも「彼女は運が悪かったんだよ」としか答えられない牧。そんな簡単な言葉で済ませたくはないという思いはありつつも、そうとしか説明できない実際。それが、1分も経たない内に1件発生しているという現状に鑑みるならば、如何に交通事故が身近に起こっているのかが良く分かります。しかも残念なことに、そう分かっていて、確かに言い古されたフレーズではあっても、止めようもなく日々必ず何処かで発生してしまう。
最後に「誰に頼まれたんだ?」との問いに、整備員が「クルマ・・・」と言いながら息を引き取る場面も、そういった“殺人”が日常茶飯事に引き起こされる車社会に向けた警鐘、引いては皮肉を表していたのではないでしょうか?交通事故は大概運転者の過失によって引き起こされます。何をそんな当たり前のことを、と仰られるでしょうが、これも被害者又はその遺族からしてみれば、人災でありながらも完全な怒りのぶつけようがないことになるのもまた事実です。考えようによっては、事故を起こした張本人である加害者からしても、特に自分の意とせずに発生してしまうことからも、生涯に亙って後を引く可能性があることを思えば、また同じく被害者であると言い得るかもしれません。では、事故を引き起こした本当の犯人は誰なのか―――
やはり、このような問いへの返答に窮した挙句、最終的に答えられるものとして「クルマ」としか挙げられない場合もあるのは事実ではないでしょうか。
それともう一つ、解釈として考えられることには「クルマ」が通常の人格とは異なる人格を生み出すといったことでしょうか?感じとしては『こち亀』の本田みたいな。つまり、車に乗るとスピード感やストレス等様々な要因が重なり合って、凶暴的な性格を生み出すこともあり得るということです。急にそれは、縦令それまでどんな善人であった人であってもいつ何時“殺人”犯へと変貌させてしまうか分からない危険性を孕むものなのです。
(2006年07月10日22時21分37秒記す)
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