評価:A 10人の娘が旅に出た
10人の娘が旅に出た
1人目が滝に打たれて死んだ・・・
9人の娘が旅に出た
9人の娘が旅に出た
2人目が崖から落ちて死んだ・・・
ヒット曲(?)となった歌の通りに次々と若い娘だけを狙った通り魔事件が発生していく・・・
う~む…
焼死の次は凍死か・・・ 何れにせよ今回は多数の人々がその犠牲となる。
その死体からは多量の放射能が検出された―――
原因は白血病を治す効果を持つとされる“スペクトルG線”を照射されたものであるとの推測がされた。これは本来、原爆か水爆かそれ以上の熱量と必要とするとされており、世界でも諦めかけられていたものであったが、これを逆に冷却することにより編み出す事に成功した者が存在するという事が次第に明らかとなる。。。{途中、今日(当時)の科学技術では0.0000001の絶対温度まで作り出す事に成功している云々の話がありましたが、私の付焼刃な化学の知識では理解不能でした(^^;}
今回は、直接的な原爆に因る被害のみならず、その二次被害とも言える体内被曝をテーマとした問題が提起されています。
何故、自分或いは妹だけが他の人と比べて、何の非も無いにも拘わらずこのような運命を背負わされなければならないのか―――
「先天的」とも言い難い、ある種人為的なものが介在する中で、今まで科学が人類に与えてきた成果とは何だったのかを根本から見直す様な問いかけが一科学者の葛藤を通して描かれています。
それと同時に、果たして非の無い人を救うのに、他の多数の非の無い人を犠牲にする事までが許されるのか―――こういった視点も、牧の返答に窮する場面から朧げながらも見出せるような気がします。
取り敢えず話し合おうとの牧の説得にも、話し合って誰が京子を救えるかと最後まで頑なに“科学には科学を”で応じようとする京子の兄―――ここにも何か少し、武断には武断で対抗せねばならないとの戦争の性質にも似た、ある種のものを感じてしまうのは気のせいでしょうか。。。
最後は皮肉にも、京子の兄からしてみれば「何もしてくれなかった国」の力によって、自身も取り押さえられ、妹を幸せにするという夢は絶たれてしまいます。牧も結局取り押さえるであろう事は認識しておきながら、何故あの場に至って話し合おうと持ち掛けたのか…。取り押さえられる場面での牧の表情からも、何か一科学者としても同情させられる側面も持っていたのかも知れません。
何が正義で,何が悪か―――それだけでは単純に二分できない現代社会に於ける事実が存在することを端的に示した作品であったと思います。
そしてラスト、「死にたくない」と切望する京子も自らがスペクトルG線を浴びて身を投げ、墓地の柵の槍に突き刺さる・・・
5人目が蜂に刺されて死んだ・・・
この場限りは、「正に」子守唄通りとなった―――
「若しかして、溶けたら治っていたのでは?」
そんな可能性をも抱きようが無いほどまでに京子は完全な死を遂げ、不運な一兄弟の人生は幕を閉じた・・・
うむ。何とも救いようがないラストだ。
そういえばラストのエンディング曲が流れる際の画像、始めの内こそ何だったのかは分からなかったのですが、よく見てみたら京子の顔だったんですね。。。しかも微妙に沈んでいるように見えるのも、リアルさを醸し出していてなかなか好い感じ(?)です。
後は、些かエンディング曲が速まっている様な気がするのですが、その回毎の「間に合わせ」感が漂っていて、此方もなかなか好い感じです。
(2006年03月11日18時48分41秒記す,2006年12月01日02時26分12秒補訂)
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