1947 グレゴリー・ペック,ドロシー・マクガイア主演 エリア・カザン監督 制作国:米 118分23秒
評価:A+ 何故だか『犬神家の一族』以来、映画という名のものを観る機会が少なくなってしまいました。まあ、単に面倒臭かっただけなのですが。
簡単に、本作は“ユダヤ人差別(反ユダヤ主義)”について取り扱ったものです。今でこそ“自由”“平等”を標榜しているかのように思えるアメリカでも、これほど大々的にそんな時代があったのか(と言っても、単に今の現状さえも知らないだけなのですが)と感じさせられてしまうような作品です。
未だ、時代が変わっても差別が残っている原因は何か―――この難題に挑戦したのが本作です。
当初「聞き込み」によって、その原因を探っていこうとする主人公スカイラー・グリーン(フィル)。しかし、人の奥底に潜む“心の傷”は、そう簡単に話してはくれないことに気付きます。そこで彼が採った行動,それは自らが被差別の対象たるユダヤ人に扮することで、実際に自ら肌で感じてみようというものです。
そうしてみると・・・出るわ出るわの嵐です。未開放地域のみならず、息子の学校、恋人キャシーとその家族、仕舞いには『平等』を謳う週刊スミス社(フィルの勤務先)内でさえも、ユダヤ人に対する差別・偏見が潜在することに気付かされます。
では、それら差別・偏見を許す原因は何か・・・。これらの差別・偏見を経験していく中で、主人公フィルは、差別に対して口出しをせずにいる無数の“良い人”が原因ではないかということを悟ります。つまり、幾ら口先だけでは「差別反対」と叫んでいても、実際に現在進行形で差別している者を咎めるだけの勇気,そして実行がないとまるで意味がない、というわけです。
確かに、当時「反ユダヤ主義」という社会のタブーに真っ向からぶつかっていったという面においては、一目置くべき所があると言えるでしょう。後は、それに向かって(差別する者に立ち向かう)何らかの具体策が提示されていれば尚一層好評価でした。
尤も、本作で、この「分かっちゃいるけど、それを実行できていない」ことだけでも明示されていたのは、私としてはそれだけでも十分示唆的かつ重要なことです。本作は、私的には「隠れた名作」たろうと考えています。
(2007年02月11日01時54分39秒記す)
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おお、かなりの高評価ですね。
機会があれば見てみます。
[2007/02/11 08:02]
わでぃ
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うまくまとめたなあ。
しかしそろそろ近代作品も評価してくれ~!

>わでぃ
今までと毛色の違った映画を観たいというのでしたら、必見ですよ。
一応、勝手ながら、私的合格ラインは「A」超えということにさせてもらってます故。
>荒野の旅人 グレード
何言ってんですか。近代作品なら、ちゃんと『地下鉄に乗って』や『犬神家の一族』を載せているではありませんか。まあ、基本的な設定自体は1960年代を下っていないような気もしないわけではありませんが。
・・・そういえば最近、映像がモノクロであることについては全く違和感を覚えないようになってきました。
[2007/02/12 02:14]
石部
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早速見させていただきました。簡単に感想を言うと、非常に面白かったです。私が今まで見た映画の中で最高と言っても過言ではないと思います。
なにがそんなに良いかというと、クリスチャンである主人公フィルがユダヤ人になりすますという設定がよいですね。被差別の側でない人間に差別の苦しみを味わわせるからこそ、同様に被差別の側でない私達も共感できるんだと思います。ただユダヤ人が出てきて差別を受けるのを観客に見せ付けるよりもずっと説教臭くなく、心に自然と入ってくるような気がしますからね。以前に「戦場のピアニスト」を見たときに、「差別は良くないね」的なメッセージを伝えようとしてるのは分かるんですが、説教臭さが全面に出過ぎててムカッときたのとは大違いです。やはり、誰もが納得するような正しいことであっても、伝え方を間違えると伝わるものも伝わらなくなってしまうんだと思います。私も注意しないといけませんわね。

おぉ!早速ご覧になられたとは、進取の気象に富んでおられますな~。
そうです。正に温故知新(古きをたずねて新しきを知る)なのです。過去にこれだけ核心に迫り、直截に人々に訴えかける作品があったなんて驚きです。・・・なのに、500円で売られているなんて何事だ(笑)。
本作は、「見た目」だけでは大差ないユダヤ人であったからこそ、尚一層余計に、人々の共感を得られたんだろうと思います。
・・・となると、「見た目」だけでは判断し難い黒人への差別は尚一層激しかったのだろうと想像されます。黒人差別についての名作としては、先日にもお話ししたのですが『アラバマ物語』なんかがオススメですよ。因みに、『アラバマ物語』の主人公も、本作と同じ
グレゴリー・ペックです。
[2007/02/15 01:27]
石部
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500円!?安ぅッ!!あれが500円だったら、最近のハリウッド映画なんて、駄菓子屋でヤッター麺と同じ価格で売られててもおかしくないですよ。紳士協定は買うことに決めます。あと、アラバマもそのうちに見てみます。

そうなんです。ビデオならず、DVDで売られているところもまた、購入欲を刺激されてしまうところの一つなんですよね(寧ろビデオで買った方が高いか)。
私も機会があれば、何時か購入しようかと考えています。これだけの名作であれば、友人が家に来た時も胸を張って飾っておくことができますしもんね。
[2007/02/17 12:44]
石部
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