最近、屡々巷間で「有言実行」なる言葉を耳にするようになった。
あれ?そういえば、嘗ては「無言実行」でなかったかな。
苟も「有言実行」の言葉通り「言った事を実行する」という意味だけならば、余りにも当たり前過ぎる。
確かにアメリカナイズされた現代の日本社会に於いては、「自己の意思表明をした上で、それを実行に移す」ということはある種の美風ともなり得ているところではあるだろう。無論、何もアクションを起こさないよりは、言ってでも責任を感じたほうが良いだろうし、実際にそれを行動に移す事はなかなか難しいことであるのは事実だから、それだけでも十分に立派な行いである事は言を俟たない。
しかし、その反面、それは動もすると自分の発言に責任を持つことができないという事の裏返しであることも言い得るのではないだろうか。若し、その言葉の意味するところが、そういった軽はずみな言動が増えてきてしまっているという現状を示しているのならば、些か問題があるだろう。
他にも「何かを言わなければ相手には伝わらない」といった風潮が相俟ってこの様な言葉が生み出された背景があるのかも知れないが、やはり「言って実行に移す」という言わば当たり前の段階から、「言わずとも自ずから実行に移す」という意味での「無言実行」に移ろわせてこそ始めて「有言実行」の元となったであろうこの言葉(「無」言実行)の重みが増してくるのではないのだろうか―――
とは云々偉そうに言いつつも、広辞苑にも「有言実行」「無言実行」のどちらの語義も載ってありませんでしたし、厳密な意味ではどちらが先に誕生した言葉であるのかは把握しかねるところではありますが。。。
【追記】
今日、本屋で立ち読みしてたのですが、どうやら「無言実行」ではなく「不言実行」であることが判明しました。なるほど、確かに「不言実行」なら広辞苑にも載っています。
語義:あれこれを言わず、黙って(善いと信ずるところを)実行すること。(広辞苑第五版引用)
・・・ということは、益々「有言実行」が誤用であることが明らかとなったわけです。勿論、“言葉”というもの自体、時代を経るごとに徐々に移ろいゆくものです。まただからこそ、その醍醐味があります。寧ろ、現代型日本社会を表徴するという意味合いにおいては、良く反映されているのではないでしょうか。
「言うは易く行うは難し」―――自己を鼓舞させる為にも、先ずはその言葉に重きをおくのも一つの手段でしょう。
にしても、またしても自分の語彙力の無さを改めて露呈してしまいましたね。まあこれで、余計に印象付けられればそれに越した事はないのですが。(^^;
(2006年04月15日22時37分追記)
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