評価:B+ 虫,或いは金魚が冷凍後解凍すると蘇生することがある様に、人間にもそれを試してみたら如何なるか―――
本作はそれを現実のものとしてしまったと同時に、ある一科学者の手によって理想とはかけ離れた姿とされてしまった、ある失踪男についての話です。
ん~。題材自体はなかなか好いのだが、ドライアイス程の冷凍力を持つ体が動き出す・・・というのは一寸不自然さが残るかな、と。でも、まあそんな瑣事に拘るよりも、内容自体が如何なのかというのを主として感想を述べていきたいと思います。でも、冷凍してても髪の毛は伸びるのですね。。。
ある日、研究者カセは会社員オカザキを誘引して、人間の冷凍実験を行う。何とも、カセの考えに拠ると「宇宙開発に犠牲者が出ても中止したことがあったか」とのこと。
そして、また別のある日、冷凍から覚めたオカザキはその凍りつく手で幾人かを殺害していく・・・。
でも、ここでも一寸疑問が残る。―――何故か?何故、あの時オカザキは幾多の人を殺そうとしたのか・・・。研究者カセやそのアシスタントを殺害しようとするのなら未だ分からないわけでもないが・・・。
ここでカセはオカザキが動き出したことに伴い、警察に発見されることを危惧して証拠隠滅の為に研究室に火を放つ。
そしてその後、完全にオカザキは死んだものと思い込んでおり、猶も人体実験を続けようとしていたカセの前に、再度オカザキが現れる・・・。続いてオカザキはカセを殺そう(?)と首に手をかけようとするも、見事カセに意外な反応をさせられ、何故だか殺害せずに外に出て行ってしまう。―――この瞬間、カセは余りに衝撃的なオカザキの姿を目の当たりにし、発狂してしまう。この瞬間、カセは「殺人」或いは「殺人未遂」罪を科すに責任能力を欠く「心神喪失者」となってしまった―――
結局、再度起き上がるや否や、恰も動物が罠に嵌められるが如く、自宅に戻ろうとしたところを「サンビーム」で焼殺される。しかも、何の注意や説得の言葉も掛けられないまま・・・。
本作品では何時もながらの科学悪者論に加え、日々日常生活を送る中で、ともすれば影が薄くなりがちなサラリーマンの哀れな末路が描かれていたと言ったら過言でしょうか。愛すべき家族には自宅から離れられ、オカザキを唯一誘い込んだ張本人であるカセでさえも、その自己の姿の恐ろしさから狂人と化してしまう。おまけに劇中では家が売られていたのが6年前,更にその1年前に行方不明とされていた事から、(当時と条文の文言が変わっていたら別ですが)恐らくこの数字も法律上の普通失踪が認められる「7年」を意図して設定されたのだろうと思われる。
そう、正にオカザキは冷凍状態から解放されたとはいえその時点では既に事実上、世間から,そして法律の上からも「死んだ」ものとして扱われていたのである―――
確かに人を3人殺め、1人を発狂させてしまったのだから、これ以上オカザキを生かしておくのには重大なる差し迫った危険があるものとして、その場で焼き殺されなければならなかった事情があるのだろうが、それにしても一応は「被害者」たるオカザキの身の上からしてみたら実に哀れである。
「科学の進歩に人間が付いて行くためには、科学者である前に先ず人間であって欲しいものだな」との的矢所長の言葉には、科学の行き過ぎに対する一つの意見を短いながらも端的に示していたのではないでしょうか。
(2006年04月08日19時16分49秒記す)
スポンサーサイト