評価:A+ 何かに追われるかの如く一目散に走ってくる女。そこに突如、旋風が巻き起こり身体が八つ裂きにされる・・・。
何だかカンフーハッスルの一場面が思い起こされるかのような始まり方である。そうか,風で人が切れるのか・・・。あれって竜巻が起こった時のような感じなんですかねぇ~?こんなんじゃ、おちおち台風の中も歩けなくなっちゃうじゃないか!!
そして早速、何時もの如くS.R.I.と警察による実況見分が行われる。犯行現場が余りにも目立ちすぎるという事で、現場で殺されたとする現場説を主張するS.R.I.と、頑なに他から遺体を持ってきたと主張して曲げない警察・・・。ここでも何時もながらにS.R.I.と警察との意見が真っ向から対立している。これほどまでに仲が悪いのか、S.R.I.と警察は。
間もなく続いて第二の事件が発生する。今回は警察側の落ち度も絡んでいる。でもやっぱし、その方針を改めようとはしない警察。そんなに協力関係を築けないものなのかS.R.I.と警察とは。
ここで、的矢所長は「かまいたち」によるものであるとの推断をする。
かまいたち―――
旋風が起きたとき、空気中に真空の部分ができ、人体がこれに接触すると鎌ででも切ったように鋭く皮膚が裂ける現象を言う。信越地方に多く、昔は鼬の仕業とした。
ご丁寧に語義まで説明してくれている。そうか,信越地方に多いのか・・・。何故でしょう?
そして次の写真を並べる場面,実に時代を感じさせる。。。全てモノクロであると同時に、現像までしている。今じゃこんな光景、殆ど見ることがないだろうな・・・。
そして安保闘争をパロったテレビ―――どこまで古いんだ、この作品は。
やがて、工事現場で働く松尾が犯人ではないかとのことで牧と野村とがマーキングを始める。しかも目が怪しいとの理由だけで(笑)。
ん・・・お、おい!
次の場面、牧が勝手に他人の部屋に侵入して捜索を開始しているではないか!!無令状でそこまでできるとは、どこまで権限が強いんだ、S.R.Iは!?
どうしてもシロとしか思えない松尾―――
真面目で、大人しくて、イタチのようにオドオドとした目の男・・・。
又も牧が何故犯人が松尾であるかの説明に窮する。ん・・・そういえばこの同じような話し方、以前にも見たような気がする。そうか・・・、彼も準
石部金吉的な男だったのか!!!
そして、そんな男がさおりを殺す・・・
でも、正直、この後の体のパーツが集まる部分とか寧ろこっちの方が、生身の人間よりよっぽど怖いんですけど。。。
結局、松尾は劇中で一言も発しないまま話は終了する。「真面目で、大人しくて」云々・・・。必ずと言っても良いほど事件が起きるとテレビで言い回されるフレーズ。40年も前から同じような状況が描かれていたとは少し驚きである。「どうして?」まさにノーリーズンの犯罪が多発している現代を反映したかのような作品である。いや、こと本作品にあっては、本当に無理由であったのか否かは分からない。兎角、巷では「昔の犯罪は必ず理由があった」と言われることが多い。しかし、動機が説明されない限りはその内心が知り得ないのは昔であっても変わらないはずであろう。「昔だから」「今だから」という杓子定規に関わらず、このような事態は若しかしたら古今東西、人間の奥底に潜んでいる一種の心の動きなのかも知れない。・・・でもやっぱり分からない。本当に人は、何も考えずに発作的に人を殺したくなる衝動に駆られるものなのだろうか?それとも何らかの社会的格差から生ずる,一貧者による社会に対する反発なのか?個人的な林ケイコに対する怨恨か?奈何せん何も語られていない限りは幾ら考えようにもさっぱりわからない。そこには一種の怪しさ,ある種の恐怖と計り知れない謎だけが見出せるとしか言い得ない。考えれば考えるほど訳がわからない。しかもおまけに、何であんな機械を拵えることができたんだ・・・???
最後に、この“意味深長”とも“中途半端”とも言える終わり方,実に私は好きである。こうやって余韻を残すような終わり方こそ、万事解決し切れることはないということを示している気がして興味深い。正に益々社会が複雑・高度化する今の世でこそ、疑問を提起するに値する一品ではなかったろうか。
(2006年04月23日01時28分22秒記す)
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